Cookieからの情報取得を制限するITP対応によって、Web広告業界は大きな変革を迫られました。
この記事では、ITP対応とは何か?についてや、これまでのITP対応の歴史、Cookieの有効期限の変化についてまとめました。
目次
ITP対応とは
ITP(Intelligent Tracking Prevention)対応とは、Appleが行っているトラッキングを防止する施策のことです。
ITP対応によって、Appleのブラウザ「Safari」でインターネットを閲覧している時に、ブラウザに保存される小さな情報(Cookie)が付与されなくなります。
日本は特にiPhoneユーザーが多く、「スマホでSafariを利用する人」は全体の約6割。
これまでCookieのシステムに利用していたWeb広告業界に激震が走り、特に2019年から対応に追われることになります。
ITP対応の歴史とCookieの保存期間
ITP対応 | ITPなし | ITP1.0 | ITP1.1 | ITP2.0 | ITP2.1 | ITP2.2 | ITP2.3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
開始 | - | 2017年9月 | 2018年3月 | 2018年9月 | 2019年3月 | 2019年5月 | 2019年9月 |
バージョン | - | Safari 11.0 | Safari 11.1 | Safari 12.0 | Safari 12.2 | Safari 12.3 | Safari 13 |
サードパーティ Cookie 有効期限 |
90日間 | 1日間 | 1日間 | 即時無効 ※3 |
即時無効 | 即時無効 | 即時無効 |
ファーストパーティ Cookie有効期限 (Javascript 利用時) |
- | 30日間 | 30日間 | 30日間 ※4 |
7日間 | 1日間 | 1日間 ※5 |
ローカルストレージ 有効期限 |
- | 使用なし | 使用なし | 使用なし | 制限なし | 制限なし | 7日間 ※6 |
※1:サイト内の遷移がなければ
※2:サイト内の遷移があってもセッションで遷移がなければ
※3:トラッカー(トラッキングする第三者)と判定された場合、Cookieのリファラ情報が削除
※4:4つ以上のドメインからリダイレクトされている場合無効
※5:サブドメイン間の遷移が行われた場合、リファラーで取得できる情報はドメイン部分のみになる
※6:ページ内操作がない場合無効
サードパーティCookieに対する規制は年々強化され、ITP2.0でついに廃止となりました。
もともと、Cookieの有効期限は発行元が自由に定めることができましたが、ITP対応によって有効期限が短くなっています。
(有効期限を設定していなかった場合は、ブラウザを閉じた時点で削除される仕様。)
Safari以外のブラウザもCookie規制を強化
ChromeやFireFoxなど、ほかのブラウザもトラッキング防止に続々と取り組んでいます。
Google社のChromeは、「2023年のうちに全ての3rd party cookieを廃止する」と公言しています。
An updated timeline for Privacy Sandbox milestones
Mozilla社のFirefoxでは、新しいcookie削除の仕組みを開発。
サイトにコードを埋め込んでいるサードパーティーからの追跡も防ぐ仕組みを実装する予定です。
Firefox 91 Introduces Enhanced Cookie Clearing - Mozilla Security Blog
企業らはユーザーはいつでも自分で設定を変更できると主張するが、ほとんどのユーザーはそうしない」ので、「デフォルトがユーザーの期待と一致する必要がある。それがFirefoxのアプローチだ」
と説明しています。
ITP対応の抜け道
ITP対応によって3rd pary cookieが廃止となり、他ブラウザもその方針に追従しています。
現在は「脱Cookie」時代とも言われ、Cookieに頼らないリマーケティング施策が注目されています。
ビックデータの活用
ディスプレイ広告大手のYahoo!JAPANは、自社で集めた膨大なビックデータから行動予測ターゲティングを行い、リマーケティング広告の代替策を行おうとしています。
クッキー時代に旅行マーケターが知っておきたい変化、データで消費者を知るカギを取材した|トラベルボイス(観光産業ニュース)
https://www.travelvoice.jp/20220120-150144
ローカルストレージ
ローカルストレージとは、ブラウザ上に情報を保存する仕組みのことをいいます。
Cookieとローカルストレージの違いは、保存期間とデータ容量です。
保存期間(ITP2.3) | データ容量 | |
ローカルストレージ | 7日間 | 5MB |
Cookie | 1日間 (1st party) | 4KB |
ローカルストレージは、Chromeのデベロッパーツールのアプリケーションタブから確認することができます。
サーバーから発行するCookieやパラメータを使ったトラッキング
また、Cookieがシステムの基盤となっていたアフィリエイト広告では、パラメータを使ったトラッキング方法や、サーバーから発行するCookieなどを活用して、トラッキング漏れを防ぐ仕組みが開発されています。