ワードプレスとECサイトを同一サーバー(ドメイン)に構築できない理由

shopifyとwordpressを両立させることはできますか?
店舗構築はshopify、ブログ機能のみwordpressで行いたいのですが、その様なことは可能なのでしょうか?

なお、ワードプレスのページにショピファイの購入ボタンの実装というのは無しでお願いします。

WordPressとショピファイを同じサーバー(サブディレクトリ )に構築することは、ベストアンサーにもある通り不可能です。

Webに詳しくない方にとっては「ワードプレスが簡単にインストールできるので、ECシステムも簡単にインストールできるのでは?」と、不思議に感じるかと思います。(私もそうでした)

shopifyに限らずBASEなどのECサイトは、ワードプレスと同じレンタルサーバーには構築できない仕組みになっています。
そのため、サブディレクトリでECサイトを構築するのが難しいのです。
※ただし、サブドメインでのECサイト構築は簡単にできます。

この記事では、Webサイト構築の初心者に向けて、サブディレクトリでECサイトを構築するのが難しい理由や、Webサービスの仕組みについてお伝えします。

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Webサイトが表示される仕組み

やや遠回りな説明になるのですが、Webサイトされる時の仕組みについて解説します。

ブラウザにURL(https://example.com/index.html)を入力してページが表示されるまで、以下のような手順を辿ります。

  1. example.comのネームサーバをドメインのDNSサーバーに問合せ
  2. ネームサーバの回答を受け取る
  3. ネームサーバに設定されたサーバーにIPアドレスを問合せる
  4. IPアドレスの回答を受け取る
  5. IPアドレスにアクセスする
  6. サーバー上のフォルダに保存されているファイルを参照する

webサイトが表示される仕組み

webサイトが表示される仕組み

このように、Webページを表示するためには、まずDNSサーバーにドメインに対応するIPアドレスを問い合わせることから始まります。

システムの実体が保存されているサーバーの違い

webシステムはたくさんのプログラムファイルから構築されていますが、そのファイルがどこに保存されているか知ることが、今回の原因を理解する上で重要なことです。

結論から言うと

  • ワードプレスは、レンタルサーバー
  • ECサイトは、カートシステム会社が管理するサーバー

にそれぞれファイルが存在しています。

自由なファイル操作ができるレンタルサーバー

ワードプレスなどのCMSは、Xサーバーやさくらサーバーなど、自分でレンタルしたレンタルサーバーで運用されています。

レンタルサーバーでは、自由にファイル操作ができたりデータベースを構築できるなど、サーバー内をある程度自由にコントロールできるようになっています。

ECサイトの実体はカートシステム会社のサーバーにある

shopifyやBASEなどのECシステムは、実際はそれぞれの自社サーバー内で運用・管理されています。

shopifyなら、shopify社のサーバー(おそらくカナダ本社にある)
BASEなら、BASE社のサーバー(おそらく東京にある)

に実体があります。
レンタルサーバー上で動作しているわけではありません。

レンタルサーバーでECシステムが構築できない理由

レンタルサーバーでECシステムが構築できない理由はたくさんあるのですが、

仮にもし「レンタルサーバーにECシステムがインストールできてしまった場合」を想定してみましょう。

ワードプレスと同一サーバーにECシステムがあったら

レンタルサーバーは契約者がFTP接続でファイルの中身を見ることができるので、ECシステムを構成するプログラムのコードも見ることができます。
ソースコードは複製できるので、shopifyならshopifyを真似たECシステムを簡単に作ることができてしまいます。
ECシステムは企業がコストをかけて開発したものなので、簡単にその技術が流出してしまっては商売になりません。
(逆に言えば、オープンソースとして自由に配布されているワードプレスが凄すぎるのですが・・・)

さらに、セキュリティ面でも非常に危険です。
どんな仕組みで動作するプログラムかわかってしまうため、セキュリティの抜け穴も見つかりやすくなります。
ECサイトは顧客情報などのプライバシーデータも取り扱っているため、流出した時のリスクはとても高いのです。
システムのアップデートもサーバー契約者が行うことになるので、アップデートしないサーバーはセキュリティリスクが高まります。

このような理由で、ECシステムはレンタルサーバーにインストールできないのです。

サブドメインならECサイトを構築できる理由

サブドメインは、サブディレクトリと違ってドメイン単位でネームサーバを設定することができます。
そのため、サブドメインのネームサーバをECシステムを提供しているサーバーに向けることで、簡単にECサイトを構築できます。

ネームサーバーによってアクセスするサーバーが振り分けられる

例えば、

  • ルートドメインをワードプレスのメディアサイト
  • サブドメインをECサイト

にしたい場合は、

  • ルートドメインはレンタルサーバー(Xサーバーなど)
  • サブドメインはECサービス(BASEやshopifyなど)のサーバー

という設定をすることで、簡単にECサイトとメディアサイトを構築することができます。

ルートドメインとサブドメインで、実際に接続しているサーバーがそれぞれ違うことがポイントですね。

shopifyやBASEなどのECカートを運営するサービスは、自社サービスのセキュリティに関して厳しくチェックしています。
全ストアのサイトを自社サーバで集中的に管理することで、個人情報などのプライバシーデータを守っているのです。

一元管理してセキュリティを高める

SEOの観点から言うと、同一サーバー(サブディレクトリ)の方が効果が高いとされています。
しかし、ECシステムを独自開発しない限り、セキュリティリスクを考慮するとワードプレスと同一サーバーに共存させるのは危険です。
ルートドメインとサブドメインを相互リンクすることで関連性を示すことができるので、SEO対策はそれで十分だと思います。

サブディレクトリでECサイトを構築するには

サブディレクトリでECサイトを構築するには、同一サーバーでワードプレスとECシステムを共存させる必要があります。

このようなサイトも存在しますが、この構成ができるのは

  1. 自社でECシステムを開発している
  2. 利用者のサーバー操作に制限がある

のどちらかになります。

例外として、「Welcart」や「Woo Commerce」のようなプラグインで導入できるECカートもありますが、セキュリティの観点から個人的にあまり推奨しません。

自社でECシステムを開発している例

今のところ

  • ルートドメインにワードプレス
  • サブディレクトリにECサイト

この構成をしている企業サイトは見たことがありません。(よく探せばあるかもしれませんが・・・)

ワードプレスは広く普及しているCMSですが、セキュリティ面では脆弱性があるので、この構成は採用されにくいのかもしれません。
ワードプレスは使用していませんが、自社のサブディレクトリでECシステムを採用している企業では

森永ダイレクトストア
https://www.morinaga.co.jp/direct-store/

などがあります。
技術的にハードルが高いので、自社開発できるリソースが必要ですが、SEO上ではかなりメリットのある構成だと思います。

サーバー操作に制限があるがワードプレスとECを共存している事例

ワードプレスとECサイトを共存できているパターンとしては、futureshopのCMSサーバー(VPS)オプションなどがあります。

CMSサーバー(VPS)オプション|機能|SaaS型ECサイト構築プラットフォームはfutureshop

レンタルサーバーではなくfutureshopが管理するCMSサーバーでの運用になるので、セキュリティに関してはfutureshopによって守られています。
TOPページにワードプレスを設置できないなど多少の制限がありますが、レンタルサーバーで自分で立ち上げるワードプレスよりもセキュリティが高いと言えます。

ただし、Shopify plusのヘッドレスコマースを使えば可能

ここまで「ShopifyのサブディレクトリにWordPressなどのCMSを入れることはできない」と書いてきましたが、実は例外もあります。

通常のShopifyからさらに機能を拡張させたShopify Plusに加入すれば、ヘッドレスコマース機能を使用することができます。
この機能の一部にeコマースAPIは、WordPressやContentfulなどのCMSと連携させることができます。

参考:ヘッドレスコマース入門:ネットショップはヘッドレス化するべき? - Shopify 日本

ただし、この構成を実現するには、バックエンドとフロントエンドの両方の技術が必要です。
技術的なハードルは低くありません。
さらに、Shopify Plus自体が月額2300$〜とエンタープライズ向けのプランとなっています。

昨今のSEOでは、サブドメインよりもサブディレクトリにメディアを構築した方が評価が高い傾向にあります。(Googleは無関係だと主張していますが、体感値では明らかに傾向があります)

理想を言えばECサイトのサブディレクトリにメディアを構築したいところですが、エンジニアの工数とShopify Plusの加入費用を考慮すると、かなり大規模な事業向けの戦略となります。

まとめ

  • サブディレクトリにECシステムを構築するのは高度な技術が必要
  • サブドメインなら簡単にECサイトを作れる
  • ワードプレスをECサイト化できるプラグインもあるが、セキュリティ面では不安が残る
  • futureshopなどのサービスを使えば同一サーバーでワードプレスとECを共存できる
  • ShopifyでもAPIが使えるヘッドレスeコマースなら、サブディレクトリにCMSをインストールできる

私もECサイト構築の際に、このあたりの理解ができず疑問に思ったので、記事にしてみました。
サーバーエンジニアではないので、もし認識がズレている箇所があればご指摘いただけますと幸いです。

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