webサイトを運営していると、
「サブドメインを貸してくれませんか?」
「サブディレクトリを貸してくれませんか?」
とSEO事業者から提案を受けることもあると思います。
社内にSEOに関するノウハウがないと、検討のしようもなくて困りますよね。
この記事では、サブドメイン貸し・サブディレクトリ貸しのリスクについて、SEOコンサルがお伝えします。
【2023.09.17追記】
LinkedInにて、検索エンジン開発チームのトップGary Illyes氏が、寄生サイトに関するコメントを発信しました。
- ドメイン貸しに関しては認識しているし、不当な検索結果だと考えている
- ホスト(貸し主)へ。サブディレサイトの評価は、親サイトにも影響する。
- ジャンルが大きく違う場合や、コンテンツの管理ができていない場合は、インデックスしておかないこと
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7108182762125242368/
また、英語版のヘルプフルコンテンツアップデートのGoogle公式文書に「寄生サイトに対する言及」が追加されました。
https://developers.google.com/search/updates/helpful-content-update
【2023.08.29追記】
サブディレクトリ貸しの法的リスクについて、弁護士の方が記事を書かれています。
最近流行している「サブディレクトリ貸し」は、貴社にとって本当にメリットがあるのか?|弁護士 西尾 公伸
私なりに要点をまとめると
- 現状、サブディレクトリを貸した側も借りた側も、その行為自体について法的責任を問われることはなさそう
- ただ、メディアの誤認表示によってユーザーが何らかの損害を被った場合、ディレクトリを貸した側が責任追及される可性はある。
とのことでした。
【2022.01.07追記】
本記事は、地方のとある企業様からドメイン貸しについての相談を受けた際に、私が回答した内容をまとめたものです。
現在、地方を中心にサブディレクトリ、ドメイン貸しの営業が増えているそうです。
この件に関して、Web担当者Forum様より、詳細がまとめられた記事が発表されました。
SEOの新たな問題施策「大手サイトのホスト貸し・サブディレクトリ貸し」は何が悪いのか?【SEO情報まとめ】
非常に体系的にまとめられており、こちらの記事も参考になりますのでぜひご一読下さい。
目次
サブドメイン貸し・サブディレクトリ貸しとは?
サブドメイン貸し・サブディレクトリ貸しとは、別の事業者に自社のサブドメインもしくはサブディレクトリを貸し、別サイトを運営することです。
ドメインを住所(土地)、サイトを家に例えると、
- サブドメイン貸し = 同じ土地に別のサイトが増える
- サブディレクトリ貸し = 家の部屋増築して別の事業者に貸す
というイメージです。
ドメイン貸しよりもディレクトリ貸しのほうが良くも悪くも影響が大きく、より慎重に判断する必要があります。
ドメイン貸し・ディレクトリ貸しのリスク
ここでは、A社がB社にドメインを貸したケースで説明します。
貸す側のA社(自社サイトのオーナー)には、大きく分けて3つのリスクがあります。
1.運用されるメディアのコントロールができない
貸したドメインでのサイト運営は、基本的に借りた側(B社)が行います。
A社がメディアの公開前に1ページずつチェックできれば良いのですが、なかなかそんな時間が取れないのが現状でしょう。
ユーザー目線で見た際に、もしB社の展開するメディアサイトに悪質なコンテンツ(嘘、批判的な内容など)があった場合、B社の信用が落ちます。
この時、A社の名前がドメイン名に入っていると、貸したA社も道連れで信用を落とすことになります。
2.貸しドメインがペナルティを受けると、親ドメインもペナルティを受ける可能性がある
ユーザー目線からの信用だけでなく、Googleの検索エンジンからの機械的な信用にも、同じことが言えます。
悪質なサイト運用をした結果手動ペナルティを受けると、サブドメインだけでなく親のドメインにも影響が及ぶ可能性があります。
【2022.10.10追記】
株式会社JADEによる2022年9月のGoogleコアアルゴリズムアップデートの変動分析結果によると、サブディレクトリを貸したサイトの本体サイトにまで悪影響を与えている傾向が見られているとのことです。
また、本体サイトの影響についても調査したところ多くのサイトがサブディレクトリ貸しの箇所だけではなく本体のサイトにも悪影響を及ぼしている傾向が強いです。
3.貸した記録はサイトを削除しても残る
もし貸した先でトラブルがあったら、貸したサイトを削除してしまえばノーリスクなのでは?
と思う方もいるかと思いますが、サイトの記録というのはWeb上に残り続けるものです。
例えば、Wayback Machineというサイトでは、世界中のサイトの運用履歴がアーカイブされており、10年前のサイトでも当時のスクリーンショットが残っています。
貸したドメインで運用されたメディアも、このようにスクリーンショットがずっと残り続けます。
さらに、SEOツールのahrefsではサイトごとに過去数年間の被リンク数が記録されています。
過去に大手サイトでも被リンク購入などブラックSEOを行った形跡が見られますが、ドメイン貸しの場合も同様に記録が残ります。
仮に悪質なメディア運用が行われた場合、形跡が残り続けてしまうことは、契約を解消した後でも常にブランド毀損のリスクにされされることになります。
Google公式が否定的なコメント
ドメイン貸し・ディレクトリ貸しの是非について、Googleはまだ公式なガイドラインを定めていません。
ただ、「検索結果がおかしいと思える場合には、都度対策をしていく」とGoogle社員の方がコメントしています。
最も強く印象に残っているのは、登壇社の金谷さんが最後に「もし僕がサイトの運営者なら、絶対にやりません。」と答えていることです。
SEOの専門家たちの意見でも、否定的な意見が大半でした。
SEO業者ァァァ #Google検索オフィスアワー
— FG🐡 (@fuguti) March 25, 2021
サブディレ/サブドメ貸し。#Google検索オフィスアワー でしっかり回答あったか。
今は貸された部分単位で短期間で落ちるので対処されてる印象。
あとは短期収益目的でこのサブドメが落ちたら次はあそこ、と移転を繰り返す悪質な所に止めを刺すドメイン単位落ちが発動するかに注目してデータ見てます。— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) March 25, 2021
なお、2019年時点のGoogle公式のツイートでも、ドメイン・ディレクトリ貸しについて言及されています。
We’ve been asked if third-parties can host content in subdomains or subfolders of another’s domain. It’s not against our guidelines. But as the practice has grown, our systems are being improved to better know when such content is independent of the main site & treat accordingly.
— Google Search Central (@googlesearchc) August 14, 2019
サードパーティが他のドメインのサブドメインやサブフォルダでコンテンツをホストすることができるのかという質問を受けました。これは当社のガイドラインに反するものではありません。
しかし、このような慣行が増えてきたため、そのようなコンテンツがメインサイトから独立したものであるかどうかをより正確に把握し、それに応じて処理できるよう、システムを改善しています。(追加ツイートより)
全体としては、メインサイトの一部であるかのように表示されるコンテンツを持つサブドメインやサブフォルダを、厳重な監視やメインサイトの関与なしに他の人に使わせないことをお勧めします。私たちの指針は、検索で最高の成功を収めたいのであれば、あなた自身のブランドを反映した、あなた自身の努力による付加価値のあるコンテンツを提供することです。
DeepLにて翻訳
一部のドメイン貸し・ディレクトリ貸しが問題視されていることを受けて、改善に取り組んでいる姿勢が見られます。
【2022.01.14 追記】
Google日本法人社員の金谷さん(@jumpingknee)より、このようなツイートもされています。
オフィスアワーでも何度か取り上げていると思いますが、このような施策は全くお勧めできないですね。いくつもご報告頂きますが長く続いているようなケースはほとんどないと思います。仮に上位に表示されてもそれが不当に上位であれば何らかの改善の対象になり、適切な対応が行われますので。 https://t.co/uIB3zOaU8f
— 金谷 武明 (@jumpingknee) January 5, 2022
【2022.12.2追記】
SEO業界の権威者である鈴木謙一さん(@suzukik)のツイートによると、寄生サイトに関してはGoogleがスパムレポートから情報収集を呼びかけているそうです。
Google の人に寄生サイトの件を聞いてきた🪳
Google としてもよくないこと(≒スパム)だと認識していて😡、アルゴリズムで自動処理できるように対応中。
まだ改良余地ありで、そのためには多くのサンプルが必要。寄生サイトを発見したらスパムレポートから報告してほしいって。https://t.co/4e1qmBt8Cd— Kenichi Suzuki🇺🇦鈴木謙一 (@suzukik) November 27, 2022
なぜSEO事業者はドメインを借りたがるのか?
SEO事業者はドメイン貸しをしたがる理由については、GoogleとSEO対策の長い歴史があります。
一番の大きな理由は、昨今のSEOではE-A-T(権威性・網羅性・信頼性)が重視されているからでしょう。
どんなにユーザーにとって役に立つコンテンツであったとしても、キーワードによっては個人サイトでは検索上位に食い込めないフィルターがかかるようになりました。
このフィルターを回避するために、権威性の足りない個人が企業の権威性を借りてコンテンツマーケティングを行うようになったという経緯があります。
一般的にはあまり知られていませんが、実は企業で運用されているドメインは、非常に価値が高いのです。
ドメインだけで10万円以上で売れることもあり、知っている人にとってはとても魅力的に見えます。
貸す側のメリット
ここまでリスクについてお伝えしてきましたが、事業者にとって当然メリットもあります。
レベニューシェアによる金銭的報酬
まず1つ目が、レベニューシェアによる金銭的報酬です。
例えば、A社がB社にドメインを貸すと、A社は何もしなくてもB社のサイト収益の一部を得ることができます。
資金的に厳しい状況にある会社にとっては、魅力的な提案でしょう。
ドメインパワーの向上
2つ目は、ドメインパワーの向上です。
B社がメディア展開することによって、A社ドメインにもユーザーが集まるようになり、Googleからの評価も上がります。
良いコンテンツを持っていても、記事数が足りず集客に苦戦している会社にとっては、B社による検索トラフィック増はSEOにも効果的です。
メディア同士が親和性の高いもの(例:クレジットカード会社が、サブドメインでクレジットカードに関するコラム記事を掲載する)場合なら、さらに高い集客効果が期待できます。
どんな場合ならリスクが少ないか?
ドメイン貸しを行う場合、
- メディア内容のコントロールが効く
- 展開するメディアが自社のコンテンツと親和性が高い
- ディレクトリ貸しではなく、ドメイン貸しである
このような状況であれば、比較的リスクは低いと言えます。
逆に、
- メディア内容のコントロールが全く効かない
- 展開されるメディアが自社のコンテンツと全く関係のない内容である
- サブドメインではなく、ディレクトリを貸して欲しいと言われている
という場合は、慎重に判断するべきだと思います。
このように、メリットだけでなくリスクもある施策となりますので、十分に検討した上で判断するようにしてください。
関連リンク
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